みなさんは「バイオマスレジ袋」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。バイオマスレジ袋は、特殊なプラスチックによって作られており環境への負荷が少ないレジ袋です。この記事では、なぜバイオマスレジ袋がここまで注目され、環境に良いと言われているのか、詳しく解説していきます。
バイオマスレジ袋の基本
まずは、バイオマスレジ袋に関する基本知識を、以下の6つに分けて押さえていきます。
なぜレジ袋は有料に?
バイオマスレジ袋とは?
バイオマスレジ袋の素材「バイオマスプラスチック」とは
なぜ環境にいいのか?
バイオマスの種類
バイオマスプラスチック材料の認証とは?これらを詳しくみていきましょう。
なぜレジ袋は有料化に?
以前は無料でもらえていたレジ袋は、現在では有料となっています。このレジ袋有料化にはどのような背景があるのでしょうか?通常のレジ袋は、ポリエチレンと呼ばれる高分子化合物でできたプラスチックによって作られています。ポリエチレンは有機化合物であるため、燃焼時には二酸化炭素が発生します。この二酸化炭素は、温室効果ガスとしても知られており、地球温暖化の要因の一つです。地球温暖化防止のため、有料化することで、レジ袋の使用量の削減が図られています。
バイオマスレジ袋とは?
二酸化炭素排出により地球環境を悪化させてしまう可能性がある一般的なレジ袋とは別に、バイオマスレジ袋と呼ばれるものもあります。バイオマスレジ袋とは、二酸化炭素の排出を低減できる、自然由来の環境に優しい素材が使用されたレジ袋のことです。以下でバイオマスレジ袋の素材について詳しくみていきます。
バイオマスレジ袋の素材「バイオマスプラスチック」とは
バイオマスレジ袋は「バイオマスプラスチック」と呼ばれる素材で作られています。バイオマスとは、もともと生物(bio)の量(mass)のことを指しますが、今日では、再生可能な、生物由来の有機性エネルギーや資源(化石燃料は除く)のことを呼びます。具体的なエネルギーや資源となるものとしては、木材、海藻、紙、生ごみ、プランクトン、動物の死骸及び糞尿などがあります。
なぜ環境にいいのか?
バイオマスプラスチックは一般的に環境に良いとされていますが、なぜ環境に良いと言われているのでしょうか。第一に挙げられるのが、素材が再生可能であるという点です。バイオマスは、基本的に、草食動物の糞尿を含めて、数十年以内で再生産が可能であるため、資源が枯渇しません。第二に挙げられるのが、二酸化炭素の排出が少ないという点です。植物由来のバイオマス素材は、自身で光合成を行っていることから二酸化炭素を自主回収します。すなわち、トータルの二酸化炭素排出量が少なくなるため、温暖化対策にもなります。第三に挙げられるのが、海洋廃棄物問題への対策になるという点です。バイオマスは生物由来の資源であるため、ゴミ問題解決への糸口となります。ただし、バイオマスプラスチックにも生分解性のあるものとないものがあります。あくまで解決への糸口としてであり、まだこれから研究開発が進んでいくのではないでしょうか。
バイオマスの種類
バイオマスは大きく分けて、
廃棄物系バイオマス
未利用バイオマス
資源作物
の3つに分けることができます。
廃棄物系バイオマスに該当するものには、動物の糞尿、食品・紙・産業などの廃棄物、木材、下水やし尿など、通常は廃棄物として処理されているものがあります。未利用バイオマスに該当するものは、稲や麦などのわら(農作物のうち非食用部)や、林地の残材などで、今まで活用がされていなかったものです。資源作物は、エネルギー源や製品材料とすることを目的に栽培された植物でサトウキビ、とうもろこし、柳、なたねなどが該当します。
バイオマスプラスチック材料の認証とは?
製品がバイオマスプラスチックであるかどうかを決める基準となる認証が存在するのはご存知でしょうか。1つは「バイオマスマーク」と呼ばれる認証です。このバイオマスマークは、生分解性を持つ原料を用いている場合に使用されるマークです。一般社団法人日本有機資源協会によって基準が定められており、この基準に合格するとバイオマスマークを公表することができます。
一般社団法人日本有機資源協会 バイオマスマーク事業事務局 バイオマスマークhttps://www.jora.jp/biomassmark/ ,(参照2022-12-20)もう1つは「バイオマスプラマーク」です。こちらは日本バイオプラスチック協会(JBPA)が運営するバイオマスプラ識別表示制度の基準に適合した製品に使用されています。
●日本バイオプラスチック協会 バイオマスプラ(BP)マークhttp://www.jbpaweb.net/identification/identification-biomass/ ,(参照2022-12-20)
生分解性プラスチックとは?
バイオマスプラスチックと同様に生分解性を持つプラスチックとして、「生分解性プラスチック」と呼ばれるものがあります。ここでは、生分解性プラスチックを次の3つに分けて紹介します。
生分解性プラスチックとは?
どんな種類がある?
生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違い
これらを以下で詳しくみていきましょう。
生分解性プラスチックとは?
現在、生分解性プラスチックの研究が盛んに行われており、この技術開発は凄まじく進歩しています。生分解性プラスチックとは、微生物の力によって最終的に水や二酸化炭素といった分子レベルまで分解されるプラスチックのことを指します。すなわち、自然界に無害で構成分子が放出されることになるため、環境問題対策になるのです。このような背景から、生分解性プラスチックに関する技術開発が積極的に進められています。
どんな種類がある?
生分解性プラスチックは大きく分けて、化学合成系、微生物産生系、天然物系の3つに分けることができます。化学合成系に該当するのは、医療用の資材などに多く使用される脂肪族ポリエステル、同じく医療分野で使用されるポリアミノ酸類、水溶性の合成材料として使用されるポリビニルアルコールなどです。微生物産生系に該当するのは、工業製品に使用されるバクテリアセルロース、医療器具の部費に使用されるバイオポリエステル、食品にも使用される微生物多糖系などがあります。天然物系に該当するのは、でんぷん、キトサンやセルロースなどで、現在ではレジ袋の素材として一般に使用されています。
生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違い
生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは、よく混同されてしまいますが、両者の言葉の定義には明確な違いがあります。生分解性プラスチックは、微生物によって生分解され、最終的に二酸化炭素と水に分解されるという点に注目されて製造されており、自然界へ無害で戻すことを目的としています。ここで言う生分解は、ただ粉々になるだけでなく、やがて目に見えなくなって自然の状態へ吸収されるくらいまで細かくなることをいいます。つまり自然へと還っていくプラスチックです。一方でバイオマスプラスチックはバイオマスと呼ばれる自然由来の原料をもとに製造されていますが、自然由来といえど、そのすべてが生分解性を持っているわけではありません。バイオマス素材の特徴は、使用することで廃棄時のCO2削減の排出を抑えることができる点にありますが、全てがバイオマスで作られている「全面的バイオマス原料プラスチック」と、部一部にバイオマスが使用されている「部分的バイオマス原料プラスチック」があり、また「全面的バイオマス原料プラスチック」であっても生分解性を有さないものもあります。そのため、製品によってはうまく生分解されずに環境を汚染してしまう可能性があるということをきちんと理解しなければなりません。
バイオマスレジ袋は普及していく?
地球環境に優しいと言われているバイオマスですが、レジ袋として今後普及していくのでしょうか。次の3つに分けて見ていきます。
無料配布できるレジ袋の条件
バイオマスレジ袋の活用・導入例
名入れスタイルで取扱いのあるバイオマス配合レジ袋
これらを詳しくみていきましょう。
無料配布できるレジ袋の条件
レジ袋の有料化対象外にする、すなわち無料で配布するためには、条件を満たしていなければいけません。現在、お客様の買い物時に無料で配布できる「袋」にあたるものは、以下の条件のどれか一つを満たす必要があります。
紙製である
植物性由来のバイオマス原料を25%以上使用しているもの
50 μm以上の厚さのプラスチックフィルムを使用していて「再利用」を案内していること
海洋性分解性プラスチック100%の素材
この機会にビニール素材から紙袋へシフトしているお店もありますが、飲食店で使用する場合は、水分の問題やコストが課題になってきます。
バイオマスレジ袋の活用・導入例
ここでは、企業におけるバイオマスレジ袋の活用例やその導入例についてみていきましょう。コンビニエンスストア大手のファミリーマートでは、2020年7月19日から全てのレジ袋をバイオマス配合率30%のものに変えて有料化をする決断を下しています。バイオマス配合率30%という数値は、レジ袋無料配布の基準を満たしてはいますが、ファミリーマートではプラスチック削減を目的としているため、敢えてレジ袋の有料化に踏み切ったそうです。施設の管理運営などを行うイオングループの一社であるイオンディライト株式会社では、2030年までに使い捨てプラスチック使用量の半減(2018年比)を目指す「イオンプラスチック利用方針」を策定しています。店舗で配布している有料レジ袋はバイオマス配合率が30%または50%のもので、バイオマス配合率25%以上の有料レジ袋の規格対象外の基準を満たしています。また、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」製品の食品フィルムは、バイオマスプラスチックを10%配合した原料を採用し、加えてバイオマス由来の成分を含むインキで印刷されているなど様々な企業努力がされています。その他には、飲食業界では株式会社松屋フーズが植物原料由来のバイオマスプラスチックレジ袋を導入しており、こちらは従来と同様に無料提供を継続しています。導入したレジ袋は、サトウキビから砂糖を生産するときにできる副生成物「廃糖蜜」を主な原料としているもので、バイオマスの配合率25%以上であるため有料化の対象外となり、無料のまま運用がされているとのことです。各企業の環境問題へ取り組む姿勢が見えますね。
名入れスタイルで取扱いのあるバイオマス配合レジ袋
名入れスタイルで取り扱っているバイオマス配合のレジ袋を2種類紹介します。
弁当袋(バイオマス25%配合)
https://www.nairestyle.com/products/detail/240
こちらの弁当袋はバイオマスプラスチック25%配合であり、レジ袋有料化の対象外となっています。小ロットで作成が可能なため、必要な分を発注することができます。名入れをすることでお店のイメージアップも間違いなしです。印刷色は25色から選ぶことができますので、イメージに合わせたカラーを選びましょう。
レジ袋(バイオマス25%配合)
https://www.nairestyle.com/products/detail/241
こちらのレジ袋も、バイオマスプラスチック25%配合であり、レジ袋有料化の対象外です。左記のレジ袋と同様に小ロットで作成可能。サイズのバリエーションが豊富なうえ、サイズによっては1万枚以下から作成が可能となっています。初めて作るから必要数がわからない、という場合でも気軽に導入できるのではないでしょうか。
まとめ
バイオマスレジ袋の展望と将来性
バイオマスレジ袋は、地球温暖化などの大気環境だけではなく、土壌環境や水環境といった環境問題の解決策の一つとして考えることができる素晴らしい製品です。しかし、あくまでも成分として生物由来の物質を含んでいるものであり、必ず生分解性を有するものであるわけではないので、すべてが自然界へ回帰できるわけではありません。従来のプラスチック製品とバイオマスプラスチックの製品を比較すれば、確かに環境への影響は少ないものとなりますが、利用することで一人ひとりが環境問題について考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。今後も、研究開発はより広く行われていくと思われます。
まとめ
本記事では、2020年から始まったレジ袋有料化問題から、その解決策の一つとなるバイオマスプラスチックや生分解性プラスチックを配合したレジ袋について詳しく解説していきました。企業レベルでは、二酸化炭素の排出を抑制しなければという意識を持ち、様々な活動が行われています。環境問題は、すでに他人事ではなく、世界中の人々が自分の問題として捉えなければいけない深刻な状況です。環境問題に対応したレジ袋は、使う側にも受け取る側にも様々な問題意識をもたらしてくれるのではないでしょうか。これを機会に、できることから取り組んでみましょう。