ブログ記事一覧
-
2022/05/26
【印刷のおはなし】アウトライン?CMYK?デザイン作成の注意点を解説します![後編]
2022/05/26
【印刷のおはなし】アウトライン?CMYK?デザイン作成の注意点を解説します![後編]
[前編] に引き続き、印刷データ作成の注意点をお伝えします。今回は、「フォント」「線」「色」について解説しますので、データ作成にお役立てください。 データ作成時のフォントの取り扱い方 デザインにかかせない「文字」。最近では様々なフォントが無料でダウンロードできるので、デザインの幅もぐっと広がり デザイナーにとってはうれしいかぎりです。しかしデザインデータでトラブルが多いのも「文字」なのです。 フォントはパソコンごとに違う Illustrator(イラストレーター)でデザインデータを作成する際、使えるフォントはパソコン自体にインストールされている、またはクラウド上のフォントが使えるようになっている必要があります。 このようにパソコンごとにフォントの環境が違うので、Illustrator(イラストレーター)のデータを制作したパソコン以外のパソコンで開いた場合「フォントがありません。」というエラーが出てしまいます。 フォントでよくあるトラブルと回避策 フォント関連のトラブルは様々なものがありますが、一番多いトラブルとしては上記でも記したように「フォントがない。」です。このトラブルを避けるために「フォントのアウトライン化」が必要となります。 フォントの形状はフォント側に情報があり、それをIllustrator(イラストレーター)が読み込んで表示している状態と言えます。フォントのアウトライン化は、フォントの形状データをIllustrator(イラストレーター)のパスデータに変換する作業、つまり、文字を図形化するということです。 文字を選択して(もしくは全体を選択して)メニューの「書式」から「アウトラインを作成」を選ぶだけです。 しかし、ここに落とし穴があります。文字に対して「効果」の処理を施している場合、「効果」の対象が「文字(テキスト)」なのか、「オブジェクト(パス)」なのかで結果が変わってしまう事があるのです。 わかりやすい例を挙げます。 「文字(テキスト)」に対して「塗り」の効果を追加して、その塗りに対して「効果」→「形状に変換」→「長方形」を適用します。すると、このような見え方になります。 これをアウトライン化して「オブジェクト(パス)」に変換すると、 このように、文字の後ろにある赤い長方形のカタチが変わってしまうのです。これは、Illustrator(イラストレーター)が認識する図形が「文字(テキスト)」と「オブジェクト(パス)」で違うからです。わかりやすい例を挙げますと、「アンダーバー」は「文字(テキスト)」の時は正方形のカタチで認識されますが「オブジェクト(パス)」に変換するとそのカタチそのもので認識されます。これにより適用する効果に差が出てしまうのです。 これを避けるために、 「アピアランスを分割」→「アウトラインを作成」 この順番で処理するようにしてください。 アピアランスの分割とは、適用されている効果を対象物と効果に分けることです。 「文字(テキスト)」に対して効果が適用されている場合、先に「効果」だけを切り離して「図形化」してしまうことで、純粋に文字だけをアウトライン化することができるようになり、アウトライン前後での見た目の違いのずれが生じにくくなります。 厳密に言うとこれでも結果が変わってしまう事があるのですが、多くの場合この順番でうまくいきます。 アウトライン前とアウトライン後の差を知りたい場合は、前と後それぞれでPDFを作成してそのPDF同士の差分を見れば、変わった箇所が明らかになりますので、チェック方法としてお勧めします。 線を知る Illustrator(イラストレーター)は「0.0001pt」という細さの線も設定できますが、これを印刷で表現するのは不可能です。 印刷に適した線の太さは 印刷できる線の細さの限界は、印刷の方法や機種により異なりますが「0.1mm」を一つの基準にしてください。ポイントで表すと「0.2835pt」ですが、「0.3pt」で設定する方が多いようです。 線でよくあるトラブル 線に関わるトラブルは、おもに以下の2つが挙げられます。 見当ズレ 印刷はCMYKそれぞれの版をピタッと同じ位置に印刷する必要があります。この揃える作業を「見当合わせ」と言います。しかし、版の位置がズレる、気温や湿度の影響で用紙の伸び縮みが起こる、用紙の寸法が正しくない、といった理由で100%ピッタリと合わせることは困難で、どうしても少しのズレが出てしまいます。 線が細く、その細い線に様々な色が設定されている場合、この見当ずれが目立ってしまい、思った仕上がりとは違うものになってしまう場合があります。 また、線にCMYKの4色を掛け合わせるのも、見当ずれのリスクが高くなります。 薄い線のかすれ 印刷は「網点」で表現されます。網点と網点を重ねると「モアレ」と呼ばれる幾何学模様が出てしまいます。 これを避けるためにCMYKの網点はそれぞれに角度を付けて、モアレを目立たないようにしています。 薄い線を表現する場合も網点で線を描くことになります。点を使って線を描くと角度によって見え方(濃さ)が変わってしまうことがあり、細い線が網点の角度とぴったり合ってしまった場合、消えてしまうこともあり得ます。 これを避けるためにも0.1mmより細い線を扱うのは避けたほうが無難です。 印刷の色について データ上の色の濃さはIllustrator(イラストレーター)やPhotoshop(フォトショップ)によって数値的にコントロールされますが、実際の印刷ではその通りにはなりません。 印刷の色はどうやって調整している? インキと紙はデジタルの世界とは違い、温度や湿度など様々な外部要因で微妙な変化が起きてしまいます。このブレをなくすために事前に「色見本」を作成して、本番の印刷の時にはできる限り色見本に近づけるよう、印刷機の設定でCMYKそれぞれのインキ量を微調整する必要があります。 色に関するトラブル 色の代表的なトラブルを2つ紹介します。 現物と印刷の写真の色が違う プロのカメラマンは商品の撮影をする際、環境光に影響されないようホワイトバランスの調整(写っている白色を本当の白色に近づける作業)等を細かく行います。しかし雰囲気を重視するようなロケ撮影の場合、環境の色に引っ張られて商品の色が変わってしまうことがあります。 その写真データを今度はデザインデータ上でRGBからCMYKに変換します。この変換テーブルによってさらに色は変化します。 最後に印刷時の色の変化を合わせると、最終的に現物とはかけ離れた色になってしまう場合があります。 「CMYKに関わるトラブル」でもご紹介しましたが、インキで100%正確な写真の色を再現することは不可能です。できる限り現物に近い状態を追求するなら、現物を見ながらPhotoshop(フォトショップ)で写真データの数値を微調整をして色校正を行い、きちんとした色見本を完成させることが重要となります。 薄い色の変化 CMYKのかけ合わせで作った「淡い色」は変化が起こりやすくなります。 モニター上で表現できたとしても印刷機で表現できる網点は、細い線が印刷できないのと同様に限界があります。 「5%」以下の網点は印刷する機種によるブレが多くなり、「3%」以下の網点は機種によっては再現できないことがある、と思ったほうが無難です。 また、紙の上にインキを乗せると若干の広がりが発生して、数値で指定した網点より若干太くなってしまいます。これをドットゲインと言います。ドットゲインの幅は温度・湿度・紙質・印刷手法によって左右されます。 このようにIllustrator(イラストレーター)上の数値と、紙とインキでの表現には乖離があり、各色の数値が小さければ小さいほどズレが目立つことになります。例えばIllustrator(イラストレーター)上で「C1%+M2%+Y3%」という色を設定した場合、C1%=網点が表現できずに0%、M2%・Y3%=ドットゲインで太ってしまいM2.5%・Y3.5%に。そうなるとモニター上の色(数値での色)と印刷の色とで以下のような差が生まれます。(モニターにより若干見た目が異なります。) 濃い色の場合、例えばIllustrator(イラストレーター)上で「C20%+M40%+Y60%」を設定した場合、1%ズレて「C21%+M41%+Y61%」になったとしても、それほど影響は出ません。 このように淡い色のかけ合わせには注意が必要です。 まとめ 印刷に関わる注意点は、細かいところを含めるときりがないほど出てきますが、大まかな注意点としては以上となります。ご理解いただけたでしょうか? ソフトでできることと現実とは違う Illustrator(イラストレーター)は数値で管理されていますが、印刷の場合は物理的な限界があるので、どうしてもデータとの差が出てしまいます。しかし、どこにズレが出やすいかを理解しているだけでもミスや想定外の結果を回避できるかと思います。 名入れスタイルへの入稿時の注意点 名入れスタイルでは、入稿用のIllustrator(イラストレーター)のテンプレートが各商品で用意されています。そこに記載されている【注意点】と「データ入稿について」 をご覧になった上で、今回の記事の内容を踏まえつつデータ作成・入稿いただけるとスムーズです。 [前編]印刷の「ソフト」「CMYK・RGB」「解像度」についての解説はこちら からどうぞ
- ブログ
-
2022/05/20
【印刷のおはなし】アウトライン?CMYK?デザイン作成の注意点を解説します![前編]
2022/05/20
【印刷のおはなし】アウトライン?CMYK?デザイン作成の注意点を解説します![前編]
印刷とは、単純に言えば紙などにインキを付けて写真・文字・図版を表現することです。 グラフィックデザインは、印刷の特性を踏まえなくてはいけないので専門的な知識が必要でしたが、最近ではグラフィックデザイン用のソフトウェアを手に入れるハードルも下がり、手軽に始めることができます。しかし「データを作ってみたけど印刷できないと言われた。」「印刷してみたら写真がモザイク状になってしまった!」といったトラブルも増えています。そんなことにならないために、印刷データ作成の注意点をお伝えします。 グラフィックデザイン界の標準ソフト デザインを制作するツールは、無料・有料含めて様々なものがありますが、世界的に圧倒的なシェアを誇るのはAdobe(アドビ)のIllustrator(イラストレーター)です。 Adobe Illustrator(アドビ イラストレーター)とは? 出典:Adobe Illustrator | グラフィックデザインソフト 【アドビ公式】 1988年にAdobeよりリリースされたベクター形式のイメージ編集ソフトです。グラフィックデザインはもちろん、Webデザインにも対応しています。デザイン構成要素である形・文字・色・レイアウトをコントロールするためのソフトで、写真の加工は同社のPhotoshop(フォトショップ)が担っており、Illustrator(イラストレーター)ではその写真を「配置」することができます。 ベクター形式とは? 複数の点と点同士を結ぶ線で図形を描く形式で、ドロー形式とも呼ばれます。Illustrator(イラストレーター)ではこの点を「アンカーポイント」、点と点をつなぐ線を「セグメント」、セグメントの方向と強さを決めるものを「ハンドル」と呼び、3つの要素を合わせて「パス」と呼んでいます。 パスは数値で管理されており、描かれた図形は拡大してもボヤけるなどの劣化が起きません。 Illustrator(イラストレーター)以外のグラフィックソフト 業界標準であるIllustrator(イラストレーター)以外にもデザイン制作ソフトはたくさんあります。その一部をご紹介します。 Inkscape(インクスケープ) 出典:Moonlight Views - Inkspace the Inkscape Gallery | InkscapeIllustrator(イラストレーター)と同様にベクター形式のソフトです。WindowsでもmacOSでも使うことができて、なんと無料!ちなみにIllustrator(イラストレーター)はサブスク形式で2,728円(税込)/月が必要です。(2022年3月時点)Illustrator(イラストレーター)ほどではありませんが、機能はかなり充実しており、初心者がベクター形式のデータに慣れるためには最適のソフトと言えます。しかし、印刷用のカラースペース(色空間)の「CMYK」に対応しておらず、データ入稿用のデータとしては使えないことが最大の弱点と言えます。 Affinity Designer(アフィニティデザイナー) 出典:Affinity Designer – プロフェッショナル向けのグラフィックデザインソフトウェアひとつの画面上でベクターデータとビットマップデータ(ピクセルの集まりで描かれた画像データ)が使える、Photoshop(フォトショップ)とIllustrator(イラストレーター)が合体したようなソフトです。サブスク形式ではなく買い切りタイプで、¥7,000(税込)とリーズナブルなのもうれしいポイントです。PDFでの書き出しができるので、PDF対応のサービスに出稿することもできます。(Illustrator(イラストレーター)から作られたPDF以外は対応しないサービスもあるようです。) LibreOffice Draw(リブレオフィス ドロー) 出典:スクリーンショット | LibreOffice - オフィススイートのルネサンスLibreOfficeはMicrosoftのOffice(Excel・Word・PowerPointなどのパッケージ)の代わりとして使えるソフトで、無料で使えます。Officeと同様に、表計算ソフト・文書作成ソフト・プレゼン資料作成ソフトなどがあり、図形描画ソフトもあります。これがLibreOffice Drawです。操作が簡単で、企画書やグラフィカルな資料を作るのには向いていますが、Illustrator(イラストレーター)と比べると機能は比較にならないほど少なく、PowerPointの使用感に似ています。PDFで書き出しができるのですが、「CMYK」に対応しておらず、入稿用のデータとしては使えません。 無料でも多機能なソフトが存在して興味深いところではありますが、データ入稿対応のサービスはIllustrator(イラストレーター)指定になっている場合が多く、名入れスタイルでもIllustrator(イラストレーター)での入稿が基本となっています。 CMYKって何? デザインの重要な要素となる「色」。現実世界の色とパソコンのモニターで見る色と印刷物で表現できる色には大きな違いがあります。 CMYKとRGBの違い パソコンで見ている色はRGBと呼ばれる光の三原色、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)で表現されています。RGBは加法混色という特性があり、3色が重なると白色になります。 一方印刷物の色はCMYKと呼ばれる色の三原色、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)に黒を加えたもので表現されています。こちらは減法混色という特性があり、CMYを重ねると理論上は黒色になるのですが、インキの特性上3色を混ぜても真っ黒にはならないので、それを補うために黒色が加わっています。ちなみに「K」はKuroではなく、「Key plate(各色との組み合わせで全体の色調を決めるキーとなる版)」のKです。 CMYKの色領域 印刷インキ(CMYK)で表現できる色は、RGBよりかなり狭く、以下のようになっています。 実物やパソコンのモニターよりくすんだ印象になるのはこのためです。 CMYKに関わるトラブル 一番多いトラブルは「印刷したら色が変わってしまった。」ではないでしょうか。印刷用データは基本的にCMYKで作ることが基本ですが、RGBの画像で作っても印刷は可能で、この場合、プリンター等でRGB→CMYKの簡易的な変換が行われます。デザインの現場では、この変換がかなり重要で、多くの場合ただ変換するだけではなく、変換後に失われた色を補填するための補正が施されます。 データ作成の時点でCMYKにしておくことが、トラブル回避のコツと言えます解像度を知ろう Illustrator(イラストレーター)が担当しない「写真」「画像」は、ピクセルと呼ばれる四角形の集まりでできており、ラスター形式やビットマップ画像と呼ばれます。 解像度とは、画像の細かさを表す数値 ラスター形式はピクセルの集まりでできているので、ピクセルが多ければ多いほど細かい表現ができます。このピクセルの細かさを表す数値が「解像度」です。解像度の単位でよく使われるのは「dpi」で、1インチの一辺に何個のピクセルが並んでいるかがわかります。 たとえば72dpiであれば、一辺に72個のピクセルがあるので1インチ四方の中にあるピクセル数は72✕72=5184個となります。 解像度が低いとどうなる? 解像度が低いと、画像を印刷した時にピクセルが見えてしまいます。つまりモザイク状になってしまうのです。ピクセルが見えるほどではない場合でも、解像度が足りないと、なんとなくぼやけた画像になってしまいます。 印刷データの規定の数値は、ずばり「350dpi」です。画像の内容によっては足りなくても問題なく見えることもありますが、350dpiを一つの基準としてください。 解像度が高すぎるとどうなる? 解像度が低いとボヤけてしまうなら、解像度が高ければ高いほどきれいになりそうなものですが、印刷の場合はそうでもありません。印刷の階調は「網点」と呼ばれる点の集まりで表現されています。 通常の印刷では、この点が1インチの一辺に175個並んでおり、この175個の点をきれいに描くための解像度が350dpiとなります。 なので、350dpi以上の解像度があっても印刷で表現できないので、ただデータが重たくなるだけなのです。また、精度が求められる印刷物の場合、原寸大で350dpiに変換してから「シャープネス」と呼ばれる輪郭をきれいにする処理を施します。大きな画像でシャープネスをかけても、配置される時に縮小されると、シャープネスの効果は半減、もしくはなくなってしまいます。 いかがでしたでしょうか。 [前編]では印刷の「ソフト」「CMYK・RGB」「解像度」について解説をさせていただきました。 トラブルが多い「フォント」「線」「色」を取り上げた[後編]はこちら からどうぞ。
- ブログ