お店を探すとき、何を重視するでしょうか?場所・営業時間はもちろん、お店の雰囲気やどんな料理が提供されているか気になりますよね。写真の良し悪しは、集客に大きな影響を与えます。この記事では、他と差がつく美味しそうに見える料理写真の撮り方をお伝えします。
料理写真は売上を左右する
料理写真の重要性
飲食店にとって、料理写真は主役の宣材写真です。お店の料理や雰囲気、さらにはどんな味なのかを連想する判断材料として大変重要なもの。その写真ひとつで、お客様が感じる印象は大きく変わるのではないでしょうか。
ポスターの写真が暗く色味の地味な写真だったら?メニューの写真がツヤのないくすんだ写真だったら?きっとお客様は良い印象を持たれないはずです。むしろ印象に残らず、そもそも集客・売上につながりません。自慢のお店を繁盛させるためにも、料理写真のクオリティにこだわりたいですね。
美味しさをイメージさせる写真とは
クオリティの高い料理写真とは?ズバリ!「美味しさをイメージさせる料理写真」といえるのではないでしょうか。
お客様がパッと見ただけで「うわぁ美味しそう!」と気を惹かれてしまう。まるで写真そのものが営業をしているようなエネルギーをもった写真です。お店に関する写真、特にメニューやポスターの写真は、食欲を刺激する美味しい写真にする必要があります。
美味しそうな料理写真は自分で撮れる
プロのカメラマンに依頼するとなれば、費用はもちろん、撮影の時間やタイミングも細かな調整が必要になってきます。なるべく費用を抑えて、ハイクオリティな美味しい料理写真を用意したいと思いますよね。
でしたら、自分で料理写真を撮ってしまいましょう!ご自身で撮影されるのであれば、撮影時間や日数、枚数だって好きなだけ撮ることができます。カメラマンに依頼して予定を決めて、お店の営業時間の合間で、せかせかと慌ただしく撮影しなければいけない制約もありません。
そうはいっても、「プロのカメラマンと同じように素敵な写真が撮れるわけない…」と思ってしまいますよね。
大丈夫です。この記事を読んでいただき、料理写真のコツやポイントを押さえて撮影すれば、きっと素敵な写真を撮ることができるはずです。
美味しい料理写真を撮るポイント
「美味しい料理写真」を撮るために、基本となるポイントを抑えていきましょう。どれか一つではなく、食材や料理に合わせながら、いくつかの手法を組み合わせて写真を撮ることが大切です。
光の使い方(逆光や半逆光がおすすめ)
料理写真において、ポイントとなるのは光の使い方です。料理写真の定番ライティングとして、「逆光」や「半逆光」がおすすめです。
光には「自然光」と「ライト」があります。料理写真を撮る場合は、まず自然光をうまく使うことを考えてみましょう。光を表すとき、「硬い・柔らかい」という表現をします。自然光でいえば、夏の屋外の炎天下で、影がクッキリ出るような直射日光が硬い光のイメージです。対して曇りの日や、屋内の窓越しなど直射が弱まるっている状態が柔らかい光となります。
屋内で料理写真を撮る場合、まずは柔らかい光の差し込む「窓際」で撮影するのが良いでしょう。柔らかい光と逆光の組み合わせは、料理写真によく合います。
光の向きを考えたとき、
光が正面から当たっている(順光)
横から当たっている(サイド光)
反対側から当たっている(逆光)
斜めから当たっている(斜光)があります。さらには光の高さを考慮すると、光の当たり方ひとつでかなり写真の印象が変わります。
逆光で撮影することで、明暗に差が生まれて立体感が出ます。光が当たっている部分はツヤを感じるので、料理が生き生きとして見えます。影になっている部分が暗すぎる場合は、カメラの設定(ISO・絞り・シャッタースピード)を調整したり、レフ板で光を足してみたり、暗さを補うと自然な仕上がりになります。
ストロボや定常光を使用する場合は、アンブレラやソフトボックスを使用して光を柔らかくすると良いでしょう。その上で、逆光や半逆光を意識したセッティングで試してみることをおすすめします。
構図を考える
料理写真を撮るうえで、どのような構図にするかも需要なポイントです。構図というのは、どのようなアングルで撮影するか、料理を画角のどの位置に置くかなど、写真の位置バランスをいいます。
三角構図
画角の料理配置として「三角形」を意識します。メインとなる料理にピントを合わせて、他の料理や背景をボカすことにより、印象的な料理写真になります。さらには、三角形を意識しつつ料理にグッと近づいて撮影するのもおすすめ。料理の内容がより鮮明になり、ピントを合わせた主役の具材が目の前にあるようなリアリティが食欲を刺激します。
対角線構図
この構図は、奥行き感の演出におすすめ。画角に対して斜めのラインを意識して料理を配置します。基本的には手前にメインとなる料理を置き、ピントを合わせます。ボカした背景との差が生まれ、料理が手に取れそうな奥行きのある写真になります。このとき、「余白」を上手に作りたいところ。料理を置いた反対の対角線上には余白ができるので、極端なアンバランスにならないように「料理がない部分のバランス」を意識するのもポイントです。
俯瞰構図
俯瞰(ふかん)というのは、高いところから見下ろして全体を把握することです。料理写真においても有効な構図で、作品感のあるオシャレな料理写真が撮れます。メイン料理以外の小物を上手に活用することで、さまざまな演出が楽しめるのも、この構図の面白いところ。配置のバランスがポイントになりますので、料理を引き立てるコーディネートが腕の見せ所です。
日の丸構図
この構図は、料理を画角中央にドン!と配置します。実はとても奥が深い構図で、配置が固定されている分、光や角度など料理そのものを際立たせるテクニックが必要です。意図してこの構図が上手くいけば、力強い風格のある写真になります。別の考え方としましては、客観視という点で多くの料理写真を同じように撮りたい場合など、あえて色付けをしない写真が撮れます。
角度
構図との兼ね合いもありますが、角度によっても料理写真の印象は変わります。
斜めから撮るのは、オーソドックスな角度で「目線」に近い自然なアングル。違和感がなく無難な撮影ができます。
真上からのハイアングルは、俯瞰構図となり作品のような写真になります。雰囲気の演出としてもおすすめのオシャレなアングルです。
逆にローアングルで撮るとどうでしょうか。
こちらはボカしを上手に利用して、料理の立体感を出したい時に有効なアングルです。
料理に思いきり近づく「接写」も、アングルと合わせて考慮してみてはいかがでしょうか。レンズの遠近効果(広角レンズを使用して、近くのものが大きく写る効果)を利用して、料理に迫力を持たせるなど、より印象的な料理写真のアイデアとなることでしょう。
器とのバランス
料理写真では、盛り付けに使用される器とのバランスも重要なポイントです。さまざまな色や形の器があり、料理によって組み合わせを意識したいところ。角皿は直線ラインがあるので、構図を整えやすいメリットがあります。丸いオーバル型の器は汎用性が高く、いろんな料理にマッチします。
形と合わせて考えたいのが器の「色」です。食べる時にはさほど意識しない食器の色ですが、料理写真を撮るときはとても重要な要素だと気がつきます。
シンプルな白いお皿は汎用性が高いですが、例えば、豆腐や大根サラダなど、白に近い色の料理だと写真がボヤけてしまいます。そんなときおすすめなのが、黒や青の「色が濃い器」です。食材の彩りがグッと際立つので、素材の鮮度や料理の華やかさを強めます。
細やかな演出のために、器の質感にも気を配ってみましょう。光の反射具合などを考慮して、ツヤのない質感の器を使用するのもおすすめ。器に光沢がない分、料理のツヤが際立ちます。美味しさのイメージを伝える演出として有効なテクニックです。
シズル感
みずみずしさや、照り、ジューシーさなど、目を惹く「美味しい料理写真」には、シズル感が必要です。
できたてステーキ料理を想像してみましょう。湯気がたち、ジュージューと肉汁が滴り落ちている焼けたお肉。艶のある備え付けの野菜。お客様の食欲を刺激するためには、「食べたい!」と思われるようなシズル感を伝えることが重要です。
みずみずしさを表す水滴、ソースの沸騰感、油のテカり、チーズや卵などのトロトロ感など。シズル感を出すために、撮影のタイミング、光の角度にこだわってみましょう。
食欲は、人間の根本的な欲求です。それを刺激できるような料理写真であれば、きっとお客様に自慢の料理の魅力が伝わるはずです。光、構図、角度、器、シズル感。これらを意識して、美味しい料理写真に仕上げましょう。
料理写真を撮る機材は?
写真を撮ることは簡単にできます。スマートフォンやコンパクトデジカメをはじめ、ミラーレス一眼も簡単な操作でかなり高画質な写真撮影が可能です。
それでは料理写真を撮りたい場合、カメラはなんでも良いのでしょうか?
おすすめはデジタル一眼カメラ
やはり本格的な料理写真を撮影したいのであれば、デジタル一眼レフカメラをおすすめします。単純に高画質な写真が撮れるメリットはもちろんですが、おすすめの理由は「自由な操作性」です。
写真撮影では光をコントロールするために「絞り・シャッタースピード・ISO感度」などの設定をします。スマホやデジカメの「オートモード」では、自動補正してくれるのでシャッターを押せば普通に撮影できますよね。しかし、自分で設定した条件で撮影したい場合は、デジタル一眼レフカメラなど「マニュアル設定機能」が充実しているカメラが好ましいです。
たくさんのダイヤルや設定ボタンがあっても使いこなせないと心配することはありません。言葉で説明されると難しく感じてしまうかもしれませんが、調整したい項目さえわかれば、あとは実際にたくさん撮影してみることで覚えていきます。感覚として「なるほど!」と感じることこそが、カメラを覚えるうえで一番の勉強ではないでしょうか。
カメラの主要な設定ポイントについて簡単にお話しします。
ISO感度
絞り(F値)
シャッタースピード
こちらが露出(撮影する際の光量)を決める基本要素になります。前述したように、デジタル一眼レフカメラのメリットは、これらの設定が任意で変更できることです。カメラに親しむためにも、各項目について簡単にご説明します。(なるべくわかりやすいように、実践的な説明であることをご了承ください)
ISO感度
アイエスオー感度、もしくはイソ感度と読みます。フィルム写真の感度規格です。デジタル一眼レフカメラにおいては、ISO感度を高く(数字を大きく)するほど明るく撮影できます。
例えば、ISO100に設定した場合、昼間の屋外なら問題なく撮影できても、屋内や夜では真っ暗でまともに撮影できません。こんなときは、ISO感度を400や800など、どんどん上げてみます。そうすると受光感度があがり、撮影した画像が明るくなっていきます。
最近のデジタル一眼レフカメラは、かなり高いISO感度設定ができますので、室内でもキレイな撮影が簡単にできます。注意点としましては、高感度になるほどにノイズが目立つようになります。撮影環境に応じて、ISO感度を調整してみましょう。
絞り
F値(エフ値)とも呼ばれ、写真撮影において重要な項目です。よく「F1.8」や「F5.6」といった表記を目にしませんか?あれが絞りを表しています。
数値が小さいほど明るく撮影できます。そしてこの設定の大きな特徴は「ボケ感」の調整です。被写界深度(ひしゃかいしんど)といって、ピントがあっている範囲を決めます。「狙ったポイントにピントを合わせて背景をボカす」という一眼レフカメラらしい撮影は、この絞りの設定で変わってきます。
また、レンズ選びの際にもF値を参考にします。単焦点レンズ(ズームできない)では、そのレンズの最大の明るさ(絞り開放)を表し、ズームレンズではズームの距離(焦点距離)における最大の明るさを表しています。(例:F3.5~F5.6など)
シャッタースピード
シャッターボタンを押して、どのくらい光を取り入れるかを調整します。シャッタースピードの調整によって、撮影画像の明るさを決めることができます。
手ブレ(撮影者の手元ブレ)や被写体ブレ(対象物が動くことによるブレ)の調整にも関係しています。シャッタースピードが早い方が手ブレ防止にもなりますし、被写体の動きを止めて撮影することが可能です。しかし、暗い場所では、十分な光を取り入れるためにもシャッタースピードを長めに設定する必要があります。そうすると、ブレやすくなってしまいます。夜間や暗所での撮影がブレやすいのはこのためです。ISO感度や絞りと組み合わせて最適なシャッタースピードを設定します。「ISO感度・絞り・シャッタースピード」を意識して撮影できるようになると、いかにデジタル一眼レフカメラが使いやすいかを実感できると思います。もう少し明るくしたい、背景をもっとボカしたいなど、料理写真を撮影する際にも細部にこだわった撮影ができるので、さまざまな項目を任意で設定できるデジタル一眼レフカメラがもっともおすすめです。
さらに、ファイル形式として「RAW(ロウ)画像」で撮影することができます。RAWデータとは、カメラのセンサーが感知した色や情報がそのまま記録されている画像データのことで、PCなどの現像ソフトを使用して、撮影後の画像をかなり細かく修正・調整をすることが可能です。明るさはもちろん、シャープネス、色合いなどもお好きなイメージで仕上げることができます。しっかりとした写真を作る上で知っておきたいことの一つです。
スマホも活用
スマートフォンの画質は、どんどん進化しています。明るい場所で気軽な写真を撮るならば、一眼レフと遜色ないのではと思えるほどです。「もうカメラはスマホで良いんじゃない?」なんて声を聞くこともあるくらいですから、日常においては圧倒的な利便性という意味でも、一眼レフカメラより活躍の場が多いことでしょう。
では料理写真に使用することはできないのでしょうか?いえいえ、サブの機動力として大いに活用できるのではないでしょうか。使用目的よっては、手軽にパッと撮影できるスマートフォンの方が都合が良い場合もあるのでは。
例えば、お店の宣伝用SNSなど、日頃から頻繁に投稿したい画像などは、撮影の手軽さや撮影後の投稿を考えるとスマートフォンに軍配があがります。よほどの悪条件(暗所など)でなければ、画質面でも問題ないでしょう。写真撮影における瞬発力という点で、スピーディな撮影と投稿用途などでスマートフォンは大活躍します。
デジタル一眼レフカメラとの大きな違いは、「撮影設定の自由度」です。スマートフォンは「加工・エフェクト」という意味では、さまざまな処理が可能で雰囲気のある写真も簡単に作れてしまいます。
しかし、撮影時の設定やファイル形式の問題もあり、しっかりした商業用の写真には不利な面もいろいろあります。レンズ交換による高画質撮影はできませんし、自然な被写界深度の調整も難しいでしょう。RAW撮影も(不可能ではないですが)厳しいです。そういった点を考慮すると、「場合によっては活用する」というのが効果的に思えます。
照明機材
写真を撮ることは、つまりは「光をあやつる」ことです。光がなければ、目の前の料理も撮影できません。普段は意識することのない「光の強さ・向き」などを、写真撮影の際はじっくり考えることが必要です。
光の基本は自然光ですが、料理写真となると屋内での撮影が多いことでしょう。光量や演出も考えて、照明機材があるとさらに魅力的な料理写真が撮影できます。
ストロボ
いわゆるフラッシュです。デジタル一眼カメラを使用する場合、外付けのストロボを光の補助として使用します。光量や光の当たる位置を調整できるので、雰囲気の演出のみならず、ISO感度を抑えた高画質な撮影が可能です。
アンブレラ/ソフトボックス
ストロボや定常光を使用する際、光の広がりや強さを調整するために用いられます。アンブレラは文字通り「傘」になっており、ストロボ光を当てて拡散させます。反射・透過タイプがあります。ソフトボックスは、光の向きを明確にできるので対象物に当てる位置や影の調整がしやすいです。
定常光
ストロボはシャッターを押したときに発せられる瞬間光ですが、はライトのように直接対象物を照らして、その場の明るさを調整します。目視で確認しながら光の具合を調整できるので、使い勝手が良く重宝する機材です。
レフ板
レフ板に光を反射させて、影になっている部分の明るさを補います。手軽に使用できますので、持っておくと便利です。
照明機材があれば、明るさを調節したり狙ったポイントに光を当てたりと、料理写真を一層引き立てることができます。お客様の目を惹くこだわりの料理写真を撮るために、ぜひ導入してみてはいかがでしょうか。
美味しい料理写真で売上を伸ばそう
お客様の目を惹く「美味しい料理写真」は、お店の売上には欠かせません。「料理は目で楽しむ」という言葉があるくらいですから、写真から伝わってくる料理のイメージが、どれだけ購買意欲と売上につながるかは容易に想像ができます。
さまざまな料理があり、お店の雰囲気も違います。お客様にとって、まだ知らないお店のヒントとなる料理写真。無意識のレベルで「美味しそう!」と感じてもらえる写真を撮るためには、細やかな工夫と情熱が必要です。パッとみただけで「このお店に行ってみよう!」と思ってもらえるだけの写真は、優秀な営業マンとなってくれることでしょう。写真は言葉を発しません。そのかわり「五感に訴えかける力」を持たせることができます。飲食店にとっての売上は「お客様に料理を食べていただくこと」です。「食べたくなる写真」を自分で撮ることは、料理を食べた後の満足感を先にサービスするような、お客様へのアクションになるはずです。
売上を左右する料理写真。自分で撮ることが可能です
自慢の料理には自信がある。しかし、お客様に興味を持っていただかなければ食べてもらえません。売上を左右するという意味では、実際の料理よりも「料理写真」が重要です。いかにして「料理の美味しさ」を一瞬で訴えかけるか。集客力のある写真は企業戦略のひとつと言えるでしょう。
そして、こだわりのポイントを抑えることで、「売上につながる料理写真」は自分で撮ることができます。今回ご紹介したカメラの知識や、撮影のポイントを参考にしていただきまして、ぜひ料理写真の撮影に取り組んでいただければ幸いです。